2023年04月19日

新しい「緑の革命」の行く先は、上から目線ではない

前略
有名な「緑の革命」は、1940年代から1960年代高収量品種の導入や化学肥料の大量投入などにより穀物の生産性が向上した。
化学肥料や農薬への依存度が高まるにつれ,農薬に耐性のある病害虫の発生や土壌の肥沃度の低下,水の汚染といった問題が
広域にわたって顕在化し,深刻さの度合いを増すことになった。
どの国も一様にダムを建設し灌漑用の水路を引き,肥料や農薬関連産業を振興し,また農村部で 2 期作や 2 年 5 期作がなされるようになると,連作により土地の疲弊も進み,化学投入財の流亡などによる河川の汚染も加速される。栽培時期が乱れ,病害虫が年間を通して発生しやすい温床をつぎつぎと生み出し,それを防除するためさらに防除作業に精を出すというサイクルを恒常化させていく。冒頭で触れた田んぼや河川に棲む生物も急速に姿を消し始め,自然界の食物連鎖もその機能が危惧されるようになってきた。
こうした環境問題と合わせて,不慣れな農薬の施用による農民の健康被害も社会問題として大きく取り上げられるようになった。.
等と、その成果に対する負の側面が指摘された。
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此処では、「新しい緑の革命」の提案であるが、視点は「穀物の増産」であるから、結局は土壌等の自然への暴力的かんしょうが行われるということには変わりないといえる。
それでも、過去からの自然農業に対して、有機物の還元など、地力保持などを基本とした本来の自然農法を推進することになる方t主尾がある。
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一方で、ビルゲイツ財団が試行しているのは、その結果種子や化学肥料の販売での儲けを得ることである。
一瞬は、農業の進展とか合理化とか今までの金科玉条の言葉そのものを実行しようとしている、これはもう「時代錯誤」である。

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  (1)ーーーーーーー食の未来――「緑の革命」を起こそうーーーーーー
         2009年2月18日、アヒム・シュタイナー、朝日、
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2008年の食糧に関する暴動は、世界のニュースの見出しから抜け落ちているかもしれないが、農場、あるいは台所で全てがうまく落ち着いたなどとイメージしてはいけない。
 オーストラリアの農地の50%近くが依然として干ばつ状態にあり、インドのヒマチャル・プラデシュ州やウッタラ・カンド州では降雨量が少ないことにより、作物の損失が40%にまで上っている。
 ケニアでは必需食料品に不足により、ますます多くの腹を空かせた人々がゴミくずをあさらざるを得ない状況にあり、結果的に多くの人々が被害を受け、なかには食中毒が原因で死んでしまう人もいる。
 日本では、推計63万人が現在、食の安全を得られず、最近では400万人のフィリピン人が食料の供給が不足していると訴えている。
 今月はじめ、ロンドンを拠点にするシンクタンクが、持続不可能な消費と生産手法は気候変動に関連があり、そのことによって次の10年で英国が食糧危機に直面すると警戒を促した。
 全体的に見れば、穀類やその他の穀物価格は依然として高いままであるために、現在10億人が空腹であると識別されている。
次の40年以上にわたり、世界はさらなる25億人のための食糧を見つけなくてはならないだろう。
 こうして、気候変動のインパクトがなかったとしても、世界は大きな課題に直面することになる。
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>>> 多くの著名な専門家たちが「緑の革命」を呼びかけている。
しかし、これは何を意味するのだろうか。
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 単に20世紀後半の化学物質に高く依存した農業モデルの推進、つまりは、水量管理型(節水型)生産システムと高収量品種農地の利用は、そこには加えるべきではない。
 厳しい事実として、2050年までに一人あたりが利用可能な耕作地は0.1ヘクタールにまで縮小するだろう。
それは、今の工業化された農法のもとでは達成不可能な能率レベルを必要とする。
 土壌劣化は、集約化と過放牧と関連があるが、過去から現在まで世界の耕作地の16%を除く全てに影響を与えてきた。
 そして、60年代に産業化された水産業の発達により、商業ターゲットにされる海産魚種のバイオマス総量は、信じがたい数字だが90%も減少してきたのである。
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 緑の革命は、世界が食糧を生産する方法だけでなく、分配や販売、消費の方法をも対象とする必要がある。
 発展途上国での農業研究への支出額の下降傾向からすれば、種への投資や価格保持メカニズム、世界市場へのアクセスや貧困層のための小規模融資は急速な回復策となるものとして、重要であろう。
 神経伝達物質のセロトニンが、イナゴが穀物を破壊する巨大な群れを形成するかどうかに関する鍵となるという、科学者による報告がなされたばかりである。
 それは、環境に優しい害虫駆除や、環境的に疑問が残る農薬にあまり頼らないような期待感の高い方法への道を開くのである。
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 緑の革命には他の道筋もある。
ひとつは、自然に反するよりもむしろ自然と共に働くことで生産力を押し上げるというものである。
それは、水や栄養や受粉媒介者のような自然なインプットを使い切るのではなく、むしろ拡大し、再循環させることによるものである。
 インドのタミール・ナードゥ州にある100年続くいくつかの紅茶のプランテーションでは、肥料の頻繁な使用や植物の成長ホルモンの散布にもかかわらず生産量が頭打ちになってきたのだが、そこでは土壌生物の調査を試みている。
 研究者が近隣の森林から得たミミズを再導入したところ、いくつかのプランテーションの収穫は282%にも上昇し、1年1ヘクタール当たりで5500ドルもの利益を上げた。
 ブラジルでは、1400万ヘクタールの大豆が、人工肥料のかわりに窒素固定バクテリアを投与された。
 アジア国々では、東京大学の科学者なども参加して、より少ない水量での米の集約農法を推進しており、それはSRI(稲集約栽培法)と呼ばれるもので、その起源は2000年もさかのぼる事が出来る。
 インドネシアでは、生産高が80%近くも上昇し、水の使用は40%、肥料の使用は50%減少し、総生産コストは5分の1に減少した。
 では、有機農法、つまり極めて偏った見方のきっかけになる問題だが、それはどうなのだろうか。
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 UNEPとUNCTADは、アフリカの24カ国にある114の小規模農地を最近調査した。
それによれば、有機農法あるいは有機に近い農法を実践しているところでは、生産高は2倍以上となったことが分かった。
その生産高の増加は東アフリカにおいて128%に上昇した。
 この研究によれば、有機農法は、伝統的な手法や化学物質を使う従来の集約農法よりも優れていることが分かった。
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 また、改善された土壌の肥沃さ、より良い保水力、干ばつへの耐性といった力強い環境的な利益も見いだされた。
その調査により、有機農法を知ることで、地域の教育の改善がなされうるという役割が明らかとなった。
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 UNEPによる新たなRRA(Rapid Response Assessment )と国際チームは環境食糧危機報告の評価を完了したばかりである。
 専門家は増え続ける家畜に穀類を与え続けることにより、貧困と環境劣化をさらに悪くすると主張している。
ひとつの選択肢としては、藁やくるみの殻のような廃棄物から動物用の砂糖を生産するために、バイオ燃料の生産を目指す技術を展開することである。
 報告の総括によれば、我々は食品廃棄物や魚の廃棄部分を動物の餌にリサイクルすることについて、賢明によりクリエイティブになる必要があると結んだ。
 もし、これが本当に変革可能な規模でなされ得るならば、その対策は予想される人口増加に伴う食物基盤のエネルギー需要を供給することができるはずである。
 これにより、既に負荷をかけている海洋環境への圧力の増加をすることなく、養魚業と水産養殖で50%の生産量の増加も可能となりうるのである。
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 世界中で廃棄される食物の量、つまり、田畑で、処理の過程で、あるいは台所での浪費(損失)というものは、おそらく現代経済の中でもっとも議論されないもののひとつである。
 アリゾナ大学によれば、合衆国における浪費と食品廃棄物は40~50%にものぼると推計された。
オーストラリアでは、食品廃棄物が国のゴミ廃棄場(埋め立て地)の半分にもなると概算されている。
 先進国の農民の中には、より高い商品価格に投資をしつつ、低価格を受け入れるよりも田畑で食物を腐らせておこうとする者もいる。
これはまったくおかしなことであり、よりまともで分別のある政策が求められる。
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 その一方で、英国では毎年、推計670万トンの家庭生ゴミが生み出されており、そのほとんどが食べられるものなのである。 
 「廃棄物と資源に関する行動計画」は、英国政府が支援する慈善事業だが、それによれば、食品廃棄物とは、最初に食物を作るのに使われた農薬、肥料、エネルギーの浪費をも意味する。
 英国の温室効果ガス排出の20%は食物生産や流通、貯蔵に関連があり、浪費され山積みになった食物を減らすことで、少なくとも1500万トンは温室効果ガスをカットすることが出来ると推計されており、そこにはゴミ廃棄場(埋め立て地)で腐敗した有機物から排出されるメタンは含まれていない。
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 「セカンド・ハーベスト」は日本で食物の救済を行うNGOであるが、彼らが言うには、日本も同じような状況にあり、地球規模の食料援助のもとで現在供給されている約800万トン以上に相当する食物を無駄にしているのである。
 世界が無駄の多いエネルギー利用の問題に真剣に向き合い始めるという兆候が存在する。食物の話となると、われわれは滅多にナプキンを持ち上げなかったし、ナイフやフォークを片付けようともしなかったのである。
 環境上のファクタリングや食物連鎖全体のより理にかなう管理は、成否の中核をなすものとなるだろう。
そう、われわれは緑の革命が必要なのである。
さもなければ、ケニアの沿岸部で現在起こっているひどい状況のように、より一層多くの人々が次の10年間で、世界のゴミの山の中から残飯を探し回ることを余儀なくされることになるのである。

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https://www.asahi.com/eco/unep/j/TKY200902180010.html#Contents
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次には、殆ど対局にあるプロジェクト、過去の失敗の緑の革命の再現である。

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   (2)ーーーーアフリカを狙え! 米国政府とモンサント社、それにビル・ゲイツ財団による食糧戦略ーーーー
        天笠啓裕;2010年02月14日、日経ベリタ、
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  このところ、米国政府とモンサント社、それにビル・ゲイツ財団が加わえたチームによる、遺伝子組み換え(GM)作物を世界中に売り込む戦略が激しさを増している。
売り込み先のターゲットになっているのが、アジアとアフリカである。
モンサント社は、昨年末デンマーク・コペンハーゲンで開催された地球温暖化防止のための気候変動枠組み条約締約国会議(COPO15)において、環境NGO が募集したインターネット投票で、もっとも悪い役割を果たした企業に与えられる「怒った人魚」賞を受賞した。 
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>>>◆ターゲットはアジアとアフリカ 
   同賞は、コペンハーゲンにちなんで命名されたもので、温暖化問題で最悪のロビー活動を行った企業に与えられた賞である。
モンサント社は、地球温暖化問題で批判されている石油・エネルギー関連企業を上回る37%の投票率だった。
次点は、ロイヤル・ダッチ・シェル社と全米石油協会だった。 
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  モンサント社の、2009年度(2009 年8 月31日までの1 年) の種子及び種子の遺伝子の売り上げが73億ドルに達したことが明らかになった。
2 位のデュポンとパイオニアハブリッド連合の売り上げが40億ドルであることから、モンスターとしての不動の地位は揺らぎのないものになっているといえる。
なお同社の種子以外を含めた全体の売り上げは117 億ドルで、21億ドルの利益をあげている、とフォーブス誌(2009年12月13日)は伝えている。 
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  そのモンサント社の戦略を支えているのが、ビル・ゲイツ財団である。
同財団は、最近、農業プロジェクトの新しい指導者にサム・ドライデンを据えた。
彼は、エマージェント・ジェネティクス社の最高経営責任者だったが、同社は2005年にモンサント社のものになっている。
そのエマージェント社の前にはアグリジェネティクス社を設立しているが、その会社は現在、ダウ・アグロサイエンス社の傘下に入っている。同財団は、モンサント人脈をトップに据えたことで、その売り込みにさらに拍車がかかりそうだ。 
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>>>◆GM稲と小麦の売り込みをはかる 
   そのモンサント社が売り込みをはかろうとしているのが、GM稲と小麦である。
稲はIRRI( 国際イネ研究所) がその売り込みの尖兵になっている。
いまIRRIは、ビル・ゲイツ財団の支援を受けて、C4稲プロジェクトを開始した。
同財団は、このプロジェクトに 1100万USドルを投ずることになっている。
稲は本来C3植物だが、GM技術を用いて、トウモロコシのような光合成効率がよく、早く成長するC4植物に転換させようというもの。 
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  IRRIはまた、栄養価を高めたGM稲である「ゴールデンライス」を開発しているが、この稲が2012年にはフィリピンとバングラデシュで承認され、直後に商業栽培が始まるだろう、と発表した。
ゴールデンライスは、ビタミンA ライスとも呼ばれ、ベータカロチンを増やしたGM稲である。
同研究所によると両国に続いて、インド、インドネシア、ベトナムでも在来品種を用いて開発中だという。 
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  小麦は、米国・カナダ・オーストラリアの小麦生産者協会が昨年5月、モンサント社の意向を受けたものと思われるが、GM小麦推進を求める声明を出したのがきっかけにして、一挙に動き出した。
モンサント社はとくに干ばつ耐性小麦を武器に、開発を始動させた。
小麦は世界最大の作付け面積を持つ穀物であり、その市場は大きい。
同社は日韓の消費者やカナダ小麦局などの強い反対に直面して、2004年に一端は開発を中止したが、ここにきて風向きが変わったと判断したようだ。
2008年のバイオ燃料ブームが火付け役となった食糧危機で、小麦価格が高騰したことが、きっかけだった。 
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>>>◆米国によるアフリカの食料支配戦略 
   米国オバマ政権も遺伝子組み換え作物売込みにまい進している。
現在の農務長官トム・ヴィルサックは、州知事時代にGM作物を推進した「モンサントの友人」という異名を持つ人物である。
オバマ政権はまた、モンサント社の要職にあるマイケル・M・テイラーをFDA(食品医薬品局)の要職に起用している。
さらに最近では、政府の貿易交渉の重要ポストに、農薬産業会の代表を選択している。
このことに対して、環境保護団体や消費者団体、全米家族経営農家連合のような生産者団体等85の団体が、上院金融委員会がこの人事を承認する段階で、反対の共同声明を発表した。 
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  その米国政府とモンサント社、それにビル・ゲイツ財団チームとなり、アジアと並びGM作物の売り込みを強烈に強めているのが、アフリカである。
その先導役が、米政府国際開発庁である。
同庁が連携を強めているのが、「緑の革命アフリカ」「アフリカ種子貿易協会」「西アフリカ諸国経済共同体」「西アフリカ種子同盟」といった団体である。 
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  ビル・ゲイツ財団も新たに、ミシガン州立大学に5 年間で1040万ドル交付することになった。
同大学は今後、アフリカ諸国がGM作物を導入できるようにバイオセーフティ規則を作成させるなど、各国政府農業省に働きかけていくことになっている。 
  昨年11月16日にローマで開催された食料サミットで、南アフリカ共和国ダーバンの大司教・ネイピア枢機卿が、「サミットはアフリカの人々がなにを求めているかを知らない。
私たちにはGM作物は不要であり、水が必要なのだ。
水さえあれば、よく育つ非GM作物がある」と述べた。 
 本来、その地域の人々にとって不必要なGM作物を売り込み、種子を支配し、それによって食料を支配しようとする米国の戦略が、いまアジアとアフリカを席巻しており、それに怒る人々との間で衝突を繰り返している。 
(科学ジャーナリスト、市民バイオテクノロジー情報室代表)  

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http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201002141501430
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今でも思考回路が切り替わらづ、「金儲け資本主義」のキョンシーが蔓延っている。
もっともっとみんなが議論しないといけない。
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では、草々
2023-4-19
森下克介



Posted by もりかつ at 11:14│Comments(0)
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