2022年01月31日
「超小型モビリティ」が「重量:800kg」という提案の評価
前略
超小型モビイリティーの話題です。
特別な新時代の車両ということかと思いましたが、どうも軽自動車のEV化のようです。
辛口の評価です、
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
ーーーー「C+pod」で考える、超小型モビリティの仕様はどこで誤ったのか?ーーーー
2022/01/31 、メディアビジネス、オンライン、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昨年末の記事で、トヨタの「C+pod」について、限り無く全否定に近い評価をした。
試乗する前に開発者とも話しているので、当人の顔が思い浮かんで、非常に気は重かったが、とはいえ、読者に本当のことを伝えないなら原稿を書く意味がないので、そこはもう正直に忖度(そんたく)なく書かせてもらった。
・・・・
で、あれから、軽自動車未満の超小型モビリティのことをいろいろ考えた。
出発点は間違っていない。
そこらの道路を走っているクルマを見ると、そのほとんどが一人乗車だ。
人ひとりの移動に1.5トンも2トンもあるクルマを動かすのは余りに効率が悪い。
いまや軽自動車だって背の高いモデルは平気で1トンを超えてくる。
だからもっとエネルギー効率の良い選択肢を用意しなくてはいけない。
ここまでは明らかに正しい。
・・・
だがしかし、一方で、わが国には本来その用途には軽自動車があった。
これに衝突安全基準を適用するために、車両寸法を大きくして、その重量増加に対処するために元々360ccだった排気量を660ccまで引き上げてきた結果が、今の軽自動車の車両重量である。
・・・
もし、その安全基準が過剰だというのであれば、それは軽規格を見直すのが本筋だ。
軽自動車規格は放置したまま、その下に安全基準を緩和したクラスを作るのは歴史的経緯を見るとどうも整合性がおかしい。
・・・
>>>●超小型モビリティの仕様はどこで誤ったのか?
位置づけとして、上に軽自動車ありきでスタートする以上、超小型モビリティの仕様は軽以下である必然性がある、その結果、モーター出力も足りない。
車高に対してトレッドもホイールベースも足りないという、クルマとして基本がおかしい規格ができ上がった。
・・・
そうやって無理矢理小さくしても、車道の端を走って他のクルマに自在に追い抜いてもらえるほどサイズはコンパクトではない。
50ccスクーターとはそこが違う。
他のクルマと同一車線を混走させるしかないとなれば、結局一般道の法定速度である時速60キロまで出せないと交通の混乱を招く。
高速道路の走行禁止だけがかろうじての防波堤である。
・・・
いびつなディメンションのクルマを時速60キロで走らせるという条件で、無策に設計すれば転倒するに決まっている。
それを「なんとかせい」と言われれば、タイヤに無闇にグリップを求めると危ないから低次元でアンダーステアを出してスリップさせるしかなくなる。
加えてスライドが突然回復した際に、過大なロールをきっかけに転倒しないようにアシをガチガチに固めることになる。
・・・
だからクルマとして乗り心地もハンドリングもダメなものが出来上がった。
その上、ボディの衝突安全もある程度やらなくてはならないのでコスト高に振れる。
軽以上に限られたスペースレイアウトに合理性を求めれば、ウェット路面で滑り始めると止めるのが難しいRRを選ぶのがベターになる。
となると後輪のスリップに備えてVSC(横滑り制御機能)やTRC(タイヤ空転抑制機能)などのコントロールも必須でここにもコストがかかる。
・・・
しかもこの超小型モビリティは、高齢者の運転免許卒業後のアシとしても期待されているので、高齢者事故対策の盛り込みも求められ、衝突軽減ブレーキは必須。
こんなものを安く作れといわれたってできるわけがない。
そもそも道路を走る以上、性能要件的には軽自動車とほぼ変わらないのに、ディメンションで不利な設定なのだ。
C+podとはそういうクルマである。
・・・
技術は魔法ではない。
要するに超小型モビリティの規格そのものが、現場を無視して無理しすぎなのだと筆者は思う。
本質的には行政の無策が呼び起こした問題だ。
・・・
>>>●パーソナルモビリティの将来設計
では、パーソナルモビリティの将来はどう設計されるべきだったのだろうか?
今更言っても詮無いことかもしれないが、ちょっとそこを整理してみたい。
・・・
まず我々が受け入れるべきは「われわれがすでに持っている手段は何か?」というリソースの点検である。
マーケットが支持した結果であるそのピースを、今更無理に変えようとしてもできない。
それを前提に、今不足している隙間を埋めるべく、いくつかのピースごとに求められる役割を変える必要がある。
何か一つのハードに何でもかんでもマルチロールに詰め込もうという考えがおかしい。
ましてや安価な超小型モビリティの領域の話なのだ。
・・・
第一にカウントすべきは軽自動車である。
すでに何度か書いているが、90万円前後で買える軽のスタンダードモデルは、その価格でありながら、衝突安全基準をクリアし、衝突軽減ブレーキも横滑り制御機能も備え(ほぼ全てがFFでリスクが低いのでTRCは不要)、さらに6エアバッグという、レベルの高い安全装備で、高速道路の走行もOK。
にもかかわらず、WLTCでリッター25キロ走る。
・・・
ライフサイクルアセスメント(LCA)で見た時に、これを超える電気自動車(BEV)は恐らく世界中のどこにも存在しないだろう。
ちなみに現時点で誰もが納得するLCAの計算方法は存在しないが、にしても一定の公平性を担保しつつ、この辺りの軽自動車を凌駕(りょうが)できるクルマは今後も出て来ないだろう。
・・・
ということで、冷静な目で再評価すれば、本来、軽自動車は世界の至宝である。
カーボンニュートラル時代に向けて世界にアピールすべき、最強モビリティの一つである。
なので、まずはこの軽自動車を四輪モビリティの最前線かつボトムラインとして扱いたい。
・・・
>>>●我が国の至宝、電動アシストサイクル
では、この下のクラスをわが国で受け持っているのは何かといえば、そこにももう一つの至宝が眠っている。
それは電動アシストサイクルである。
子供から前期高齢者まで、老若男女が、免許も使い方の講習も必要とせずに当たり前に使いこなしている。
実勢価格で見れば、下は6万円程度から、子どもを2人乗せられる17万円級、あるいは後期高齢者でも状況次第ではなんとか使いこなせそうな20万円級の三輪モデルまで、存在する。
パーソナル電動モビリティがこんなに普及している国は他にない。
・・・
電動アシストサイクルというと、すぐにシェアリングだ何だと話が出るが、放置車両問題や、手荒い扱いによる損壊など問題が多々あり、中国などではすでにシェアサイクルの会社がいくつも破綻している。
写真は筆者がノルウェーのオスロー駅近郊で撮ったものだが、電動シェアサイクルもキックボードも、やはり放置問題は深刻で、トラックが日に何度か市内を巡回して、車両に仕込まれた位置情報発信器を元に回収して回るという体たらく。
当然そこではCO2も発生するし、巡回の労働コストも料金に乗る。
果たしてコレが効率の良い交通システムなのかどうかはかなり疑問の余地があった。
・・・
にもかかわらず、スマホも使わず、ITを駆使したシェアも全く工夫していないわが国では、個人所有というごく当たり前のやり方でこの電動アシストサイクルの普及をすでに見事にやり遂げている。
普通のやり方で成功していることの凄さをもっと認めるべきだし、アピールもすべきだ。
・・・
考えてもみよう。
例えば、米国なら近所のスーパーまで、CO2を排出しながらクルマで行くところである。
わが国が電動アシストサイクルの普及でどれだけCO2を抑制しているか。
普及台数を考えれば、その効果は途てつもないものになるだろう。
しかもスマホでシェアだとか、クラウドで何とかなどという難しい話も何もいらない。
おじいちゃんでもおばあちゃんでもいますぐ使える。
・・・
例えば都内の移動など、平均移動速度でいえば、高速を使わない限りクルマとさほど遜色はない。
労働に従事する年齢なら、時速にして15キロくらいは行けるだろう。
上り坂でスピードダウンしない電動アシストサイクルは、平均速度の維持で非常に有利なのだ。
レースウェアに身を固めたおっさんの乗る100万円のロードレーサーを、上り坂では食料品のエコバッグとこどもを前後に満載した主婦が颯爽(さっそう)と抜いていく。
・・・
昨今のアシスト距離はもはや長大といっても良く、アシストを最強に設定しても廉価な通勤通学モデルですら50キロくらいのレンジを持つモデルはざらだ。
お高いスポーツモデル、いわゆるe-bikeでアシストを弱めて運用すれば200キロ以上も走る。
速度制限の範囲(時速24キロ以下)ならアシストも強力で、10キロ程度の移動は訳も無いし、ちょっと慣れれば30キロだって大したことはない。
そう考えると、都市内の移動は、ほとんど電動アシストサイクルで事足りるはずで、これは脱炭素の日本モデルとして世界にアピールすべきポイントである。
・・・
>>>●残ったピースは電動キックボード?
なので、すでに埋まっているパーツとして軽自動車と電動アシストサイクルを基準に置くべきだ。
では他に足りないのは何だろうか?
今やリモートの時代になったとはいえ、多くの従業員が一斉に電動アシストサイクルで出社したら、あちらもこちらも駐輪場が足りない。
駐輪場の整備は重要課題として解決していくべきだが、それで全てがまかなえるわけではない。
・・・
そこを担うのは電動キックボードなのではないか?
これは基本、電動アシストサイクルの下、つまり徒歩速度の領域を担うものとして、時速10キロを上限とし、その代わり、免許とナンバー取得、ウィンカーを不要にし、自転車同様、ヘルメット着用を任意にすべきだと思う。
何なら速度リミッターを付けるか、時速10キロを超えると点灯するランプの装備を義務付けて、速度違反で捕まえたら罰金を取るのでも構わない。
・・・
電動キックボードは、車輪のサイズからいって欧州並みの時速25キロはかなり危ない。
前輪がわずかな段差に当たっただけで顔から倒れる。ヘルメットを着用していようが、リスクは高いのだ。
だから無理して速く走らせようとぜず、人が小走りで出せる速度までに規制した方がずっと合理的だと筆者は思う。
・・・
この電動キックボードもまた個人所有の方がベターだろう。
電動アシストサイクルに対する最大のメリットは、駐輪場が不要なことだろう。
さらに、小型軽量のタイプなら、カバンなどに収納して公共交通機関で持ち運べ、駅からのラストワンマイルの移動や、乗り換えの不便な路線間の移動に使えること。
会社についたら机の下に収納して充電も可能なことも加えておく。
・・・
時速10キロで30分。
つまり移動距離にして5キロ程度までならこれで行けるだろう。
こういうものは放っておくと重厚長大競争に走る。
電動アシストサイクルの下側を受け持つモビリティなので大容量バッテリーは要らない。
速度は出さないのだし、むしろ、利便性のメリットをハッキリ打ち出すためには、何なら車両重量5キロの規制を作っても良い。
5キロ以上の移動や、時速10キロ以上の速度を求める人は電動アシストサイクルに乗れば良い。適材適所は大事だ。
・・・
>>>●雨の日、高齢者、歩行困難者
健常者で、晴天ならばこれでほとんどが事足りる。
では雨の日にどうするか? そこもまた埋まっていないパーツである。
まずは健常者の話だ。
超小型モビリティの失敗は車道を走らせようとしたことだ。
歩道を走るか、スクーターのようにクルマが追い越し可能なコンパクトな車体で車道の混走をする以外にない。
・・・
トヨタへのダメ出しがスタートなので、解決策もひとまずトヨタのモデルをベースに提案していく。
例えばトヨタの立ち乗り小型モビリティ「C+walk T」に筒型の簡易テントを装備するのはどうだろうか?
おそらく自転車1台分のスペースに3台は停められる。
・・・
横風の問題などもあるだろうが、それは自転車だって同じだ。
無謬(むびゅう)性を求めると行き先がなくなる。
これも電動キックボードと同様に時速10キロを上限とする。
万が一の転倒の際、車両と一緒に倒れないために、このテントからどう脱出するかはちょっと工夫が必要だが、そうなるとポンチョかカッパという話になってしまう。
Tシャツで出勤できる会社なら良いが、スーツがいるような環境だと、ちょっと難しいかもしれない。
・・・
最後に高齢者や、歩行困難な人のパーソナルモビリティだが、これは従来の電動車椅子に幌(ほろ)をかけるしかないだろう。
ひと頃に比べて車体がコンパクトになってきているので、歩道を走るには少し扱い易くなっているはずだ。
トヨタでもC+walkの着座仕様を用意している。コレに屋根が付けられれば現状可能な範囲で利便性を持たせられるのではないか。
これまで耐候性が完全にアウトだったことから見れば進歩である。
・・・
とはいえ、多数の選択肢からケースバイケースで最適なものを選べる健常者と違って、歩行困難者の場合は第二選択肢がない。
これで全てをと考えると、どこでも電動車椅子が通れるほどには歩道が整備されていない。
ここだけ少し脆弱(ぜいじゃく)なことは否めないので、インフラも含めてより使う人に優しい問題解決を考えていく必要を感じる。
・・・
ということで、まとめである。
パーソナルモビリティは、本来全体のグランドプランを作って、足りないパーツを埋めていくものだと思う。
それを全体図も考えないで、ただ軽自動車をもう少しコンパクトにしたところで、何もメリットがなかったという話である。
(池田直渡)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
https://www.msn.com/ja-jp/money/other/c-pod-%E3%81%A7%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B-%E8%B6%85%E5%B0%8F%E5%9E%8B%E3%83%A2%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%81%AE%E4%BB%95%E6%A7%98%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%A7%E8%AA%A4%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%8B/ar-AATj4t5?ocid=msedgntp
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
最後に「電動キックボード」を取り上げています。
私も、将来のパーソナルな移動手段には、この「電動キックボードの改修型」が良いのではないかと思っていました。
前輪を二輪で、後輪は一輪(デフが省ける)の三輪仕様は昔のオート3輪式は転倒の危険があったのと同じで、前輪を2輪として後輪の上に椅子を設定した3輪車、フレームは自転車などと同じパイプフレームで、屋根付きの車体と、後部には折りたたみが出来る小型の荷台または、前後に並んだ2人乗り、または小型の牽引車用フックを使うのが良いのではないか、ということを考えていました。
勿論、地域の移動には「高速リフト式のモノレール」を使うのが良いと思います。
・・・・
2030年・2050年には、すでに河川流域圏の地域共同体が自治州として、「自給自足・地産地消」の「化石燃料使用ゼロ」「地球全緑化」に向けた経済・行政上の自治を確立していますから、高速道路やリニア新幹線やもちろん航空機を使うこともありません。
日本国内だけでなく、世界中の人々の生活スタイルを変えなければなりません。
ある種の「ノマド」的生活圏を考える必要があるのではないかと思います、例えば大井川の上流部の人たちは、季節的に下流部で暮らしたり、沿岸部の人たちも季節によっては上流部の生活をするなど共同体としてのいろんな運用を考え実践することもありと思います。
まだまだいろんな知恵の出し方があると思います。
・・・・
では、草々
2022-1-31
森下克介
超小型モビイリティーの話題です。
特別な新時代の車両ということかと思いましたが、どうも軽自動車のEV化のようです。
辛口の評価です、
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
ーーーー「C+pod」で考える、超小型モビリティの仕様はどこで誤ったのか?ーーーー
2022/01/31 、メディアビジネス、オンライン、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昨年末の記事で、トヨタの「C+pod」について、限り無く全否定に近い評価をした。
試乗する前に開発者とも話しているので、当人の顔が思い浮かんで、非常に気は重かったが、とはいえ、読者に本当のことを伝えないなら原稿を書く意味がないので、そこはもう正直に忖度(そんたく)なく書かせてもらった。
・・・・
で、あれから、軽自動車未満の超小型モビリティのことをいろいろ考えた。
出発点は間違っていない。
そこらの道路を走っているクルマを見ると、そのほとんどが一人乗車だ。
人ひとりの移動に1.5トンも2トンもあるクルマを動かすのは余りに効率が悪い。
いまや軽自動車だって背の高いモデルは平気で1トンを超えてくる。
だからもっとエネルギー効率の良い選択肢を用意しなくてはいけない。
ここまでは明らかに正しい。
・・・
だがしかし、一方で、わが国には本来その用途には軽自動車があった。
これに衝突安全基準を適用するために、車両寸法を大きくして、その重量増加に対処するために元々360ccだった排気量を660ccまで引き上げてきた結果が、今の軽自動車の車両重量である。
・・・
もし、その安全基準が過剰だというのであれば、それは軽規格を見直すのが本筋だ。
軽自動車規格は放置したまま、その下に安全基準を緩和したクラスを作るのは歴史的経緯を見るとどうも整合性がおかしい。
・・・
>>>●超小型モビリティの仕様はどこで誤ったのか?
位置づけとして、上に軽自動車ありきでスタートする以上、超小型モビリティの仕様は軽以下である必然性がある、その結果、モーター出力も足りない。
車高に対してトレッドもホイールベースも足りないという、クルマとして基本がおかしい規格ができ上がった。
・・・
そうやって無理矢理小さくしても、車道の端を走って他のクルマに自在に追い抜いてもらえるほどサイズはコンパクトではない。
50ccスクーターとはそこが違う。
他のクルマと同一車線を混走させるしかないとなれば、結局一般道の法定速度である時速60キロまで出せないと交通の混乱を招く。
高速道路の走行禁止だけがかろうじての防波堤である。
・・・
いびつなディメンションのクルマを時速60キロで走らせるという条件で、無策に設計すれば転倒するに決まっている。
それを「なんとかせい」と言われれば、タイヤに無闇にグリップを求めると危ないから低次元でアンダーステアを出してスリップさせるしかなくなる。
加えてスライドが突然回復した際に、過大なロールをきっかけに転倒しないようにアシをガチガチに固めることになる。
・・・
だからクルマとして乗り心地もハンドリングもダメなものが出来上がった。
その上、ボディの衝突安全もある程度やらなくてはならないのでコスト高に振れる。
軽以上に限られたスペースレイアウトに合理性を求めれば、ウェット路面で滑り始めると止めるのが難しいRRを選ぶのがベターになる。
となると後輪のスリップに備えてVSC(横滑り制御機能)やTRC(タイヤ空転抑制機能)などのコントロールも必須でここにもコストがかかる。
・・・
しかもこの超小型モビリティは、高齢者の運転免許卒業後のアシとしても期待されているので、高齢者事故対策の盛り込みも求められ、衝突軽減ブレーキは必須。
こんなものを安く作れといわれたってできるわけがない。
そもそも道路を走る以上、性能要件的には軽自動車とほぼ変わらないのに、ディメンションで不利な設定なのだ。
C+podとはそういうクルマである。
・・・
技術は魔法ではない。
要するに超小型モビリティの規格そのものが、現場を無視して無理しすぎなのだと筆者は思う。
本質的には行政の無策が呼び起こした問題だ。
・・・
>>>●パーソナルモビリティの将来設計
では、パーソナルモビリティの将来はどう設計されるべきだったのだろうか?
今更言っても詮無いことかもしれないが、ちょっとそこを整理してみたい。
・・・
まず我々が受け入れるべきは「われわれがすでに持っている手段は何か?」というリソースの点検である。
マーケットが支持した結果であるそのピースを、今更無理に変えようとしてもできない。
それを前提に、今不足している隙間を埋めるべく、いくつかのピースごとに求められる役割を変える必要がある。
何か一つのハードに何でもかんでもマルチロールに詰め込もうという考えがおかしい。
ましてや安価な超小型モビリティの領域の話なのだ。
・・・
第一にカウントすべきは軽自動車である。
すでに何度か書いているが、90万円前後で買える軽のスタンダードモデルは、その価格でありながら、衝突安全基準をクリアし、衝突軽減ブレーキも横滑り制御機能も備え(ほぼ全てがFFでリスクが低いのでTRCは不要)、さらに6エアバッグという、レベルの高い安全装備で、高速道路の走行もOK。
にもかかわらず、WLTCでリッター25キロ走る。
・・・
ライフサイクルアセスメント(LCA)で見た時に、これを超える電気自動車(BEV)は恐らく世界中のどこにも存在しないだろう。
ちなみに現時点で誰もが納得するLCAの計算方法は存在しないが、にしても一定の公平性を担保しつつ、この辺りの軽自動車を凌駕(りょうが)できるクルマは今後も出て来ないだろう。
・・・
ということで、冷静な目で再評価すれば、本来、軽自動車は世界の至宝である。
カーボンニュートラル時代に向けて世界にアピールすべき、最強モビリティの一つである。
なので、まずはこの軽自動車を四輪モビリティの最前線かつボトムラインとして扱いたい。
・・・
>>>●我が国の至宝、電動アシストサイクル
では、この下のクラスをわが国で受け持っているのは何かといえば、そこにももう一つの至宝が眠っている。
それは電動アシストサイクルである。
子供から前期高齢者まで、老若男女が、免許も使い方の講習も必要とせずに当たり前に使いこなしている。
実勢価格で見れば、下は6万円程度から、子どもを2人乗せられる17万円級、あるいは後期高齢者でも状況次第ではなんとか使いこなせそうな20万円級の三輪モデルまで、存在する。
パーソナル電動モビリティがこんなに普及している国は他にない。
・・・
電動アシストサイクルというと、すぐにシェアリングだ何だと話が出るが、放置車両問題や、手荒い扱いによる損壊など問題が多々あり、中国などではすでにシェアサイクルの会社がいくつも破綻している。
写真は筆者がノルウェーのオスロー駅近郊で撮ったものだが、電動シェアサイクルもキックボードも、やはり放置問題は深刻で、トラックが日に何度か市内を巡回して、車両に仕込まれた位置情報発信器を元に回収して回るという体たらく。
当然そこではCO2も発生するし、巡回の労働コストも料金に乗る。
果たしてコレが効率の良い交通システムなのかどうかはかなり疑問の余地があった。
・・・
にもかかわらず、スマホも使わず、ITを駆使したシェアも全く工夫していないわが国では、個人所有というごく当たり前のやり方でこの電動アシストサイクルの普及をすでに見事にやり遂げている。
普通のやり方で成功していることの凄さをもっと認めるべきだし、アピールもすべきだ。
・・・
考えてもみよう。
例えば、米国なら近所のスーパーまで、CO2を排出しながらクルマで行くところである。
わが国が電動アシストサイクルの普及でどれだけCO2を抑制しているか。
普及台数を考えれば、その効果は途てつもないものになるだろう。
しかもスマホでシェアだとか、クラウドで何とかなどという難しい話も何もいらない。
おじいちゃんでもおばあちゃんでもいますぐ使える。
・・・
例えば都内の移動など、平均移動速度でいえば、高速を使わない限りクルマとさほど遜色はない。
労働に従事する年齢なら、時速にして15キロくらいは行けるだろう。
上り坂でスピードダウンしない電動アシストサイクルは、平均速度の維持で非常に有利なのだ。
レースウェアに身を固めたおっさんの乗る100万円のロードレーサーを、上り坂では食料品のエコバッグとこどもを前後に満載した主婦が颯爽(さっそう)と抜いていく。
・・・
昨今のアシスト距離はもはや長大といっても良く、アシストを最強に設定しても廉価な通勤通学モデルですら50キロくらいのレンジを持つモデルはざらだ。
お高いスポーツモデル、いわゆるe-bikeでアシストを弱めて運用すれば200キロ以上も走る。
速度制限の範囲(時速24キロ以下)ならアシストも強力で、10キロ程度の移動は訳も無いし、ちょっと慣れれば30キロだって大したことはない。
そう考えると、都市内の移動は、ほとんど電動アシストサイクルで事足りるはずで、これは脱炭素の日本モデルとして世界にアピールすべきポイントである。
・・・
>>>●残ったピースは電動キックボード?
なので、すでに埋まっているパーツとして軽自動車と電動アシストサイクルを基準に置くべきだ。
では他に足りないのは何だろうか?
今やリモートの時代になったとはいえ、多くの従業員が一斉に電動アシストサイクルで出社したら、あちらもこちらも駐輪場が足りない。
駐輪場の整備は重要課題として解決していくべきだが、それで全てがまかなえるわけではない。
・・・
そこを担うのは電動キックボードなのではないか?
これは基本、電動アシストサイクルの下、つまり徒歩速度の領域を担うものとして、時速10キロを上限とし、その代わり、免許とナンバー取得、ウィンカーを不要にし、自転車同様、ヘルメット着用を任意にすべきだと思う。
何なら速度リミッターを付けるか、時速10キロを超えると点灯するランプの装備を義務付けて、速度違反で捕まえたら罰金を取るのでも構わない。
・・・
電動キックボードは、車輪のサイズからいって欧州並みの時速25キロはかなり危ない。
前輪がわずかな段差に当たっただけで顔から倒れる。ヘルメットを着用していようが、リスクは高いのだ。
だから無理して速く走らせようとぜず、人が小走りで出せる速度までに規制した方がずっと合理的だと筆者は思う。
・・・
この電動キックボードもまた個人所有の方がベターだろう。
電動アシストサイクルに対する最大のメリットは、駐輪場が不要なことだろう。
さらに、小型軽量のタイプなら、カバンなどに収納して公共交通機関で持ち運べ、駅からのラストワンマイルの移動や、乗り換えの不便な路線間の移動に使えること。
会社についたら机の下に収納して充電も可能なことも加えておく。
・・・
時速10キロで30分。
つまり移動距離にして5キロ程度までならこれで行けるだろう。
こういうものは放っておくと重厚長大競争に走る。
電動アシストサイクルの下側を受け持つモビリティなので大容量バッテリーは要らない。
速度は出さないのだし、むしろ、利便性のメリットをハッキリ打ち出すためには、何なら車両重量5キロの規制を作っても良い。
5キロ以上の移動や、時速10キロ以上の速度を求める人は電動アシストサイクルに乗れば良い。適材適所は大事だ。
・・・
>>>●雨の日、高齢者、歩行困難者
健常者で、晴天ならばこれでほとんどが事足りる。
では雨の日にどうするか? そこもまた埋まっていないパーツである。
まずは健常者の話だ。
超小型モビリティの失敗は車道を走らせようとしたことだ。
歩道を走るか、スクーターのようにクルマが追い越し可能なコンパクトな車体で車道の混走をする以外にない。
・・・
トヨタへのダメ出しがスタートなので、解決策もひとまずトヨタのモデルをベースに提案していく。
例えばトヨタの立ち乗り小型モビリティ「C+walk T」に筒型の簡易テントを装備するのはどうだろうか?
おそらく自転車1台分のスペースに3台は停められる。
・・・
横風の問題などもあるだろうが、それは自転車だって同じだ。
無謬(むびゅう)性を求めると行き先がなくなる。
これも電動キックボードと同様に時速10キロを上限とする。
万が一の転倒の際、車両と一緒に倒れないために、このテントからどう脱出するかはちょっと工夫が必要だが、そうなるとポンチョかカッパという話になってしまう。
Tシャツで出勤できる会社なら良いが、スーツがいるような環境だと、ちょっと難しいかもしれない。
・・・
最後に高齢者や、歩行困難な人のパーソナルモビリティだが、これは従来の電動車椅子に幌(ほろ)をかけるしかないだろう。
ひと頃に比べて車体がコンパクトになってきているので、歩道を走るには少し扱い易くなっているはずだ。
トヨタでもC+walkの着座仕様を用意している。コレに屋根が付けられれば現状可能な範囲で利便性を持たせられるのではないか。
これまで耐候性が完全にアウトだったことから見れば進歩である。
・・・
とはいえ、多数の選択肢からケースバイケースで最適なものを選べる健常者と違って、歩行困難者の場合は第二選択肢がない。
これで全てをと考えると、どこでも電動車椅子が通れるほどには歩道が整備されていない。
ここだけ少し脆弱(ぜいじゃく)なことは否めないので、インフラも含めてより使う人に優しい問題解決を考えていく必要を感じる。
・・・
ということで、まとめである。
パーソナルモビリティは、本来全体のグランドプランを作って、足りないパーツを埋めていくものだと思う。
それを全体図も考えないで、ただ軽自動車をもう少しコンパクトにしたところで、何もメリットがなかったという話である。
(池田直渡)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
https://www.msn.com/ja-jp/money/other/c-pod-%E3%81%A7%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B-%E8%B6%85%E5%B0%8F%E5%9E%8B%E3%83%A2%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%81%AE%E4%BB%95%E6%A7%98%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%A7%E8%AA%A4%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%8B/ar-AATj4t5?ocid=msedgntp
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
最後に「電動キックボード」を取り上げています。
私も、将来のパーソナルな移動手段には、この「電動キックボードの改修型」が良いのではないかと思っていました。
前輪を二輪で、後輪は一輪(デフが省ける)の三輪仕様は昔のオート3輪式は転倒の危険があったのと同じで、前輪を2輪として後輪の上に椅子を設定した3輪車、フレームは自転車などと同じパイプフレームで、屋根付きの車体と、後部には折りたたみが出来る小型の荷台または、前後に並んだ2人乗り、または小型の牽引車用フックを使うのが良いのではないか、ということを考えていました。
勿論、地域の移動には「高速リフト式のモノレール」を使うのが良いと思います。
・・・・
2030年・2050年には、すでに河川流域圏の地域共同体が自治州として、「自給自足・地産地消」の「化石燃料使用ゼロ」「地球全緑化」に向けた経済・行政上の自治を確立していますから、高速道路やリニア新幹線やもちろん航空機を使うこともありません。
日本国内だけでなく、世界中の人々の生活スタイルを変えなければなりません。
ある種の「ノマド」的生活圏を考える必要があるのではないかと思います、例えば大井川の上流部の人たちは、季節的に下流部で暮らしたり、沿岸部の人たちも季節によっては上流部の生活をするなど共同体としてのいろんな運用を考え実践することもありと思います。
まだまだいろんな知恵の出し方があると思います。
・・・・
では、草々
2022-1-31
森下克介
Posted by もりかつ at 14:24│Comments(0)